甘い唐辛子

「…若、助かった。ありがとう。」

「維十でいい。若って呼ぶな。」

「…わかった。」

霞澄は両手に積まれた雑誌を持って立ち上がったが、雑誌が重かったのか、ふらついた。

俺が上に積まれている雑誌を20冊程取ると、霞澄は驚いた顔をした。

初めて見る霞澄の驚いた顔は、意外と可愛かった。

「持つ。無理すんな。」

正直、恥ずかしかったから目を反らすと、後ろからふっと息の漏れる音がした。

振り返ると、霞澄が片方の口端を上げ、目を細めて笑っていた。

本当は「憎らしい笑い方をする奴だな」って言いたかった。
でも、言えなかった。


どうしてかはわからない。

初めて見た霞澄の笑顔に、言葉が出なかったんだ。


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