甘い唐辛子
維十はコーヒーを頼み、私はカプチーノを頼んだ。
ぼーっとしていると、さっき買った靴を維十に持ってもらっているのに気付き、
慌てて「私の物だ。私が持つ」と言うと、維十は「荷物持ちは男の仕事だ」と言って私が出した手を拒んだ。
いい奴だな。と、素直に思った。
40分ぐらい、ぼーっとしたり、時々くだらない話をしながらその喫茶店で過ごした。
久しぶりにゆっくり出来たから嬉しかった。
町行く人々は色とりどりの服に身を包み、時折吹く風に寒そうに身体を固くした。
風になびく髪を邪魔くさそうにする女や、
眉間にシワを刻みつけた男、
泣く子どもを引きずるように連れて行く母親や、
背中が曲がった小さな身体を更に小さくして、寒さに堪える老人…
寒さと闘う窓の外にいる人とは違い、暖房が効いた暖かいこの喫茶店内にいる私は、
この世界から弾き出された惨めな異人の様…
目の前に広がる世界から、ガラス張りの箱に閉じ込められた展示物みたいで…
恥ずかしくもあり、悲しくもあり…同時に幸せでもあった。