甘い唐辛子
「ヤスっ…あぁ、霞澄。」
慌てた様子で現れた維十は、なぜか着崩したスーツ姿で、私を見た後に気が抜けたように肩の力を抜いた。
「お疲れさんでした、若。何か御用っすか?」
「あぁ、ちょっと調べてもらいたい事が…」
緩んだネクタイをうっとうしそうに外した維十は、私をチラッと見た。
「席、はずすな?」
「いや…大丈夫だけど…いや、やっぱり外してくれ。悪いな。」
私は頷いてから部屋を出た。
廊下を歩いていると、組長が何人かの組員を引き連れて、正面から歩いてくるのが見えた。
「お久しぶりです、組長。」
「あ…あぁ。」
私が軽く頭を下げて隣を通り過ぎると、組長の弱々しい声が上から降ってきた。
相変わらず、ビクビクしてるな…
そう思いながら組長の横顔を横目に見た。