君という海に溺れる




いつも、いつも。

変わることなく彼は私の涙を拭ってくれる。

その優しい温度は広い海さえも包んでしまいそう。


いつだって、気付いてほしかった。

私が言葉の裏に隠した本音に。


拾い上げてほしかった。

表せなかった言葉の意味を。


私自身が、その思いたちを見失ってしまう前に。




「ハナの言葉伝わりにくいかもね。笑顔で嘘をつくから」




それはこの身を守る見せかけの城壁。

その下の表情を見せないために作り上げた偽りの仮面<ピエロ>。


やっぱり気付いていたのかとアダムの言葉に唇を噛む。


そんな私の鼻をぎゅっとアダムの指が摘まんだ。




「それに…頑固で意地っ張り」


「ぬぅ」




鼻を摘ままれたせいで口から漏れる奇怪な声。




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