この声が枯れるまで
俺はその先生が大嫌いで、一度ケンカした

今まで押さえてきた気持ちを先生にぶつけたのだ。そしたら、もう先生もぶちキレて先生の中から勝手に「桜田隼人」という存在を消したのだ。俺が話しかけても先生は気づいていないような素振りをみせ、先生は俺という存在を先生の中から消したんだ。

俺は悔しくて悔しくて……泣いた。そのときはまだ10歳くらいだったのに自分の存在を忘れられてるっていうことに苛立って泣いた。


部屋にこもってご飯も食べなかった……というか食べたくなかった。食べ物が上手く喉に通らなくなった。


でもそんなとき俺の隣の部屋から優しい音が弱った俺に語りかけてきたんだ。



〝大丈夫 大丈夫 未来の自分はきっと 笑っているから〟


歌詞のなかのこのフレーズを聞いた瞬間俺が今まで背負ってきた「不安」や「プライド」や「自分の存在のなさ」が全部消えていった。



未来っていうのは明日かもしれないし明後日かもしれない。だからいつか笑って過ごせる日まで頑張りたいって思えた。



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