溺れる唇

「ええっ!付き合ってたんですか?!」

焼酎の入った益子焼のタンブラーを手に
したまま、あゆみちゃんは叫んだ。

「あの、三浦裕馬と?!」
「ちょっ、あゆみちゃん!しーっ!」

ここは居酒屋のカウンター。

一応は公共の場所なので、こんな大声で
叫んでいい所ではない。

あゆみちゃんがほとんどを占めている
私の視界の中でも、他のお客さま方が、
何事か、と、こちらを見てらっしゃる。

「フルネームで言うのはダメ。ね?」

誰が聞いてるかもわからないんだから。

「ああ、じゃあ、“裕馬”で」

にこっと笑う、あゆみちゃん。


本当にもう・・・



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