溺れる唇
「それ、直すのにどのくらいかかる?」
「え?そうだな。3、40分くらい」
「じゃあ、どっちが早いか競争ね」
「え?競争?」
全く、相変わらず、察しの悪い男。
私は大げさにため息をついてみせ、
裕馬を振り返った。
本当に、よくこれで営業企画なんて
エリート部署に入れたわね。
「だから、私がその資料を取りだす間に
アンタはその作りかけの書類を
完成させるの。どっちが早いか競争よ」
「え?翔子、でも」
バッグの中から、小さめのドライバー
セットと専用のコードを出し、
私は、フフン、と笑ってやった。