恋わずらい
佐藤と交わした会話は、ほんの二言だけだった。
しかし、香夏子は強烈に佐藤の魅力とり憑かれ、家に帰るとすぐに、インターネットで佐藤のことを、とにかく色々、検索した。知れば知るほど、佐藤に対する想いは強くなっていった。

それから一週間後の会議で、香夏子は、10月末、中国へ出張することが決まった。場所は北京だった。色々リサーチしていたから、佐藤の拠点が今北京にあることを香夏子は知っていた。単純な香夏子はすぐにこう思った。
「もしかしたら、会えるかもしれない・・。」

出張の日程が決まるとすぐに、佐藤にメールをした。
「10月28日~11月4日まで、出張で北京に行きます。お時間があれば、お会いしたいです。」
だめもとだった。返信がなくても、しょうがないと思っていた。大体、私のことなんて、覚えているわけがないと。

しかし、数日後、なんと佐藤から返信がきた。
「11月3日に北京に戻ります。その日なら時間が取れそうです。」

香夏子は飛び上がりそうになった。あの佐藤さんが、私に、メールをくれた。信じられない。会えるかもしれない・・いや絶対に会う!!

そして、なんとも偶然に、11月3日は、香夏子の30歳の誕生日だった。

―北京。佐藤に会える日が楽しみで、毎日そればかり考えていた。あと3日、あと2日・・・・そしてとうとう、11月3日当日を迎えた。
仕事が終わって、ホテルに帰ってからは、ずっと携帯を握り締めていた。佐藤が北京の空港についたら連絡をくれることになっていた。

Pulululu・・電話が鳴った。佐藤だった。「今、北京に着いたよ。どこかで食事しようか?なにか食べたいものある?」香夏子は、佐藤が中国でどれだけ有名か知っていたから、即座にこう答えた。「好き嫌いはないので、なんでも。それより、佐藤さん、中国のファンに外で私とご飯を食べているのを見られたら、大変じゃないですか?いつも佐藤さんが食事をする、いきつけの場所があればそこでいいです。・・そこにしましょう。」「わかった。じゃ、あとで、場所をメールする。7時に会いましょう。」

中国の道は不慣れではなかったし、すぐに指定された場所もわかった。ローカルな雰囲気が流れる、外国人はあまりいない場所だった。
時計の針は、6時55分をさしていた。
もうすぐ、佐藤さんが来る・・・・あの佐藤さんに会えるんだ・・・・

香夏子の身体は興奮と緊張で震えていた。
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