幸せ家族計画
「なんだよ。何泣いてんだ」
「泣いてなんかいません! ……あなたが、失うとか何とか言うからでしょ」
虚勢を張っているような大きな声が浴室に響く。
紗彩は優さんを亡くした。
おそらく、今俺が紗彩に感じてるくらいの感情で好きだった人を。
その死を乗り越えるだけでも、おそらくものすごい労力が必要で、
俺を選ぶのにも、ものすごい勇気が必要だったんだろうと、改めて思う。
ギュッと強く彼女を抱きしめて、その髪に顔をうずめた。
「俺は、紗彩より先には死なない」
俺だって置いて行かれるのは嫌だけど。
紗彩が一番に望んでいるのは、きっとこれだと思うから。
彼女の鼻をすする音が大きくなり、水滴が湯船に落ちた。
「……うっ」
「1分でも1秒でも、長生きしてやるよ」
確証のない約束でも、構わない。
少しでもいい。
安心させてやりたい。
「うん」
「絶対」
「……うん」
小さく頷く彼女を抱きしめながら、のぼせる前に出ないとな、なんて事を頭の片隅で考えていた。