幸せ家族計画
結局、夕方5時を過ぎた時点で親父と紗彩の両親には一度帰ってもらうことにした。
サユも一緒にと思ったけれど、頑として離れようとはしなかった。
紗彩は紗彩で、言葉少なく虚ろな目をしている。
昨晩からよく寝れてないことも考えれば、体力的にも限界だろう。
「大丈夫か? 紗彩」
「うん。大丈夫」
それでも、そう問えば答えはいつも同じ。
俺が苛立っても仕方ないが、何もできない自分に無性に腹が立ってくる。
「辛いとか苦しいとか色々あるだろ? どうして言わないんだ?」
思わず紗彩に当たるような事を言ってしまってハッとする。
紗彩は、息を荒げたままゆっくりと俺を見る。
そして口をパクパクと動かしたから、耳元に口を寄せた。
「……紗優が、不安になるから」
サユには聞こえないほどの小さな声で告げられた言葉。
それでようやく、今までの紗彩の態度に合点がいった。
冷静に振る舞っていたのも、弱音を吐かないのも、皆サユの為だったんだ。
「……ったく。母親ってヤツは」
そう呟きながらも、湧き上がってくるのは彼女に対する尊敬の念と自分の不甲斐なさ。
紗彩のそんな気持ちを、何故俺は気付けなかったのか。