幸せ家族計画
「あ、あのね」
「俺と紗彩は、旅行を楽しむような仲じゃなかった」
彼の声が頭上から落ちてくる。
髪に息がかかって、心臓が大きくはねる。
「え?」
「軽蔑されるかも知れないけど、……契約恋愛ってやつだったんだよ。
全く愛情がない訳じゃないけど、お前に対するのとは違う。
守りたいとか大事にしたいとか、そう言う気持ちじゃ無くて、
お互いに、どうしようもない感情を解消したいだけだった」
「おに……」
「一緒にいて、いつも互いに違う人間を見つめてたんだ」
「……」
「俺は、お前を見てた」
抱きしめる腕の力が強くなる。
掌の体温が薄手の服の上からジワリと伝わってくる。
それはそのまま、彼の愛情として私の身の内にしみ込んでくるようだ。
彼が私を想っていてくれてる事は本当だと思う。
だけど、紗彩さんは?
「で、でも。紗彩さんの気持ちは分からないじゃない。
お兄ちゃんの事、本気だったかも知れない」
「それは無いよ」
彼にしては珍しく迷いもなくそう答える。