魔天戦史
「…心の、闇…」

「誰もが、心の闇に震えながら生きているのです。その闇を受け入れることが出来れば、何ものにも屈しない強靱な魂を得ることが出来るのです。」

「…強靱な、魂…」





「…悠里か…」

緋凰は襖の外の人影に話し掛けた。襖を開けて入って来たのは、悠里だった。

「どうじゃ、彼の容体は?」

「はい。腹部の傷は、跡は残るかも知れませんが後遺症の心配は無さそうです。しばらく安静にしていれば問題は無いはずです。」

「そうか…済まんのぉ、君の息子だと言うのに、こんな目に合わせてしまって…」

「いえ、こんな予感はしてましたから…」

「ほぉ…?」

「斗耶さんが言ってたんです。勇翔は必ず自分を超える、と…」

「…あの斗耶がのぉ…そこまで認めておったのか?」

「はい。私は、『大神殺し』ですから…」

悠里の一言は、四人にかなりのショックを与えた。

「大神殺し…そうか…確かにそれなら父をも超えるはずだ。」

「大神殺し…数百年かかる進化をわずか一世代で成し遂げる力を秘めた女性ですか…」

「…まさか、実在するとは…世の中何があるか分からんものじゃのぉ。」

「…あの子は、大元帥にもなれる器だとも言ってましたよ。」

「大元帥じゃと?」

「では、まだ何か勇翔にはあると言うことか…」

「…悠里様、勇翔は…一体、何者なのですか?」

レオンは自分の疑問を素直に打ち明けた。

「…勇翔は、私達の可愛い一人息子ですよ。」

悠里は笑顔で告げて部屋を出て行った。

「…いつの世も、母親とは強いものじゃのぉ。」

「…あぁ。」

四人は、母親というものの強さをまざまざと見せつけれた。
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