魔天戦史
「…償い…」

勇翔は握り締めた右手を見つめて呟いた。

そこに拾蔵が戻って来た。

「忘れておったわ。ほれ。」

拾蔵は棒状の布に包まれた物体を放り投げた。

「わ、とと…」

何とか受け取って中を見ると、それは一本の刀だった。

「これ…!?」

勇翔は刀を鞘から抜いた。

「…蒼天…!?」

それは勇翔が研究所で抜いた蒼天だった。

「それは君が持っていて良いそうじゃ。」

「え、何で…」

「君は、まだまともな神器を所持しておらんそうじゃな。」

「あ、はい…」

「プレイヤーが神器を所持していないというのは、かなりお粗末な話でのぉ…君なら、それを使いこなせるじゃろう?」

「…どうでしょう…」

「大丈夫じゃよ。君ならのぉ。」

「…何を根拠に…」

「君は、お父さんの流派を知っておるかのぉ?」

「流派、ですか…?」

「知らぬじゃろうな。まぁ、それは構わん。その中に、居合い抜刀術というものがあってのぉ。緋凰が言うには、君はその居合い抜刀術を使っておったそうじゃが。」

「…えっと…」

「まぁ、具体的には真空の刃を飛ばしたり、瞬間移動からの一撃などがそうなのじゃが…覚えておらんか?」

「…確かに、使ってた様な気がします。」

「そうじゃろう。それが、東郷一刀流居合い抜刀術というものじゃよ。」

「…あれが…」

「居合い抜刀術とは言ってもかなり特殊な部類でのぉ。非常に扱いが難しいのじゃ。」

「でも、僕はお父さんから習ったんですが…お父さんが刀を持ったところなんて…」

「別に刀である必要は無いからのぉ。」

「…そうなんですか…」
「まぁ、それに限らず斗耶は全ての流派を皆伝した唯一の男じゃからの。」
< 140 / 304 >

この作品をシェア

pagetop