魔天戦史
光の主 七つ目の子羊



「……それで、家に来たという訳か……」


「はい……ご迷惑、でしたか?」



「いや、そんなことは無い。むしろ、光栄なことだ。フォーラム公国の国家元首に会えたのだから……」



勇翔は日本に来てまず最初に師紀邸を訪ねた。公王が誰かと接点を持ちたいと言っていたのもあるが、本心では自分一人で公王の側にいるのが気が退けたからだ。




「……私も、名高い炎皇にお会い出来て光栄だ。会談の席で顔を見掛けたことはあったが、こうして話すのは始めてだからな。感謝するよ、勇翔君。やはり君に頼んだのは正解だったな」



「い、いえ…でも、意外でした。お二人が初対面だったなんて……」



「アルバーヌから話は聞いていたんだがね。実際に会って話すのは今日が初めてなんだ」


「儂ももう年じゃからなぁ……こんな年寄りでも良ければ、いくらでも話し相手になろう……」


拾蔵は煙管を吹かしながらそう言った。


「私も、もう若い身ではありませんよ…本来なら、孫がいてもおかしくないのですが……あいにく、息子がまだ王位を継ぐ気がまるで無い様でしてね……」


「ご子息と言うと……アルベール・クライル・フォーラム公子……でしたかな?」


「えぇ……もう今年で二十三だと言うのに、世界を巡って旅をするだとか言って、一向に落ち着こうとしない……全く、お恥ずかしい話ですよ」


「いやいや、何をおっしゃる。公子殿の名は私も聞いたことはありますが、そのどれもが彼に助けられたという様な話ばかりでしたよ」


「そうですか……ですが、やっぱり私は国を継いで欲しいのですが……ままならないものですな……」


「…公王殿ともなれば、気苦労も絶えないでしょうなぁ……」



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