魔天戦史
「…はぁ…」

一人余韻に浸るグレンに、通信が入った。

「敵は殲滅出来たかい、グレン?」

その声は大元帥の声だった。

「あぁ、一人残らず皆殺しだ…」

「流石だね。では、帰還してくれ。」

「了解…すまない…」

「…どうかしたかい?」
「…帰還は遅れそうだ。」

グレンはそこで通信を切った。

「…お前か、仮面の男とか言う奴は?」

グレンは振り返らずに背後の気配に言った。すると気配が消えた。
「…!?」

グレンはとっさに剣を横に振った。剣は振った先で仮面の男の剣とぶつかった。

「…流石、と言うべきか。直感だけで防ぐとはな。」

金属同士がこすれ合う音と同時に二人は距離を置いた。

「…やはり、あの程度ではお前の力を削ぐ事は出来んか…」

「!?…貴様、最初なら捨て駒のつもりで…!?」

「あぁ。あの程度の奴等なら、ここで消えてくれた方が後々のためだ。」

「…ッ、外道が…ッ!」
「ふ…お前からそんな言葉が出て来るとはな…」

「…どういう意味だ…」
「…かつて自分の母を手に掛け、父すらもそれをトラウマにして自殺に追い込んだ…それを外道と呼ばずに何と呼ぶ?」

「…ッ!?」

グレンは全身の力が抜けて行くのを感じた。次の瞬間には、男が目の前に迫っていた。

「…ッ!?」

「やはり貴様は愚か者だ…」

男は剣を振り下ろした。

「…ッ!?」

グレンは目を固く閉じた。

ギィ……ン!!

まるで金属同士がこすれ合ったかのような音以外は何も変化が起きなかった。グレンはゆっくりと目を開けた。
「…くっ…!」

グレンと男の間には巨大な十字架を背負った灰色の髪の男性がいた。

「お前…!?」

「ご無事か、グレン殿?」

「…レオン…!?」

レオンと呼ばれた男性は仮面の男の剣を弾き返した。

「ほぅ…ジャッジメントの特務隊長自ら戦場に現れるとは…その装備から察するに、拠点を殲滅した帰りといったところか?」

レオンは剣を仮面の男に向けた。

「…貴様が何者かは知らんが国連に歯向かうのならば容赦はしない…」

「…今は退くが上策か…」

仮面の男は剣を納めて消えた。二人は共に本部に帰還した。
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