一緒に暮らそう
４月いっぴの今日から新年度が始まる。新多は新しい職場に初出勤している。

　店を畳んで求職中の紗恵は、彼のマンションで留守番をしている。そろそろハローワークにも行かなければならないと思っているが、今日はとりあえず引っ越しの後片付けをしている。

　斎藤新多という人物は、有名な電機メーカーの研究員だった。家族の陰を感じさせないところからすると、おそらく独身なのだろう。

　それにしてもここは結構な造りのマンションだ。ベイエリアのタワーマンションというやつだ。
　一流企業の社員はこんな部屋に住めるのかと感心する。

　独り者だというのに２LDKの物件に住んでいる。紗恵はその内の一間を借りて　る。

　ダイニングには北欧製のソファーや棚、大画面の液晶テレビが設えられている。
　男の独り住まいだというのに、台所はこれまたシステムキッチンだ。
　こんな台所があれば、紗恵などは腕のふるいがいがある。調理用具の一部を置かせてもらって、何か作ろうと思う。今は時間ならいっぱいある。

　貸し与えられた６畳の部屋には、最低限の家具だけを運び込んだ。いずれここも出ていかなければいけないのだから、身軽な方がいいと思って、いらないものは処分してきた。自分には調理用具さえあればいい。
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