一緒に暮らそう
 午前7時。新多がダイニングに行くと、早朝にもかかわらず、紗恵が朝食の支度をしていた。エプロン姿の彼女が振り返って、笑顔で彼に挨拶をする。

「おはようございます!」

「あ、おはよう」
新多ははねた髪を思わず手で押さえた。居住まいを正してからこの部屋に来るべきだっただろうか。長年の独り暮らしにはない光景に少し面食らう。

「朝ご飯できてますから」
 ここに越してきてから数日間、紗恵は毎日朝夕の食事を用意してくれている。

「そんなに気を使わなくてもいいのに」
「だって私、居候だし、今は仕事もしてないし」
「君はいくらかお金を入れてくれてるだろう」
「そんなの大した額じゃないし、それに私、あの仕事で早起きが習慣になってるんです。惣菜屋をやっていた時は朝から仕入れと仕込みをしていましたから」

「じゃあ、食費は俺が出す。作ってもらってるんだし。そうだな、家賃と相殺しして、足が出たらその分を払おう。これで食費は折半ということになるだろう」
「そうしてもらえるととても助かります」
 紗恵が笑顔で答える。


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