一緒に暮らそう
 店を閉じるのは少々手間だった。愛着のある調理用具は一式こちらに持ってきた。

 本来叔父は、店舗をかなりきれいにして出ていかないと細かく文句を言ってくる人だが、別の事業者に貸したがっていたところなので、あまりうるさいことは言ってこなかった。清掃業者も叔父の持ちで入れてもらった。


 店が襲撃を再び受けた夜。あの後、その場に居合わせた常連客の新多が片づけを手伝ってくれた。
翌朝も仕事が控えているというのに、彼は午前0時を回るまで掃除に付き合ってくれた。

 自分に下心があるのかもしれないとも思うけど、あれはなかなかできることではない。
 最初に暴漢から助けてもらって以来、紗恵の中で彼に対する信頼のようなものが芽生えてきた。だから今回も彼の厚意に甘えようと思った。


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