一緒に暮らそう
 一仕事終えてもまだ午前中だ。
 午後からはハローワークに行く予定だが、それまでは特に何もすることはない。

 世間の専業主婦というものはこういう毎日生活を送っているのだろうか。旦那を送り出した後、家事をやってもせいぜい午前中で終わるだろう。子育てをしている主婦でなければ、結構気楽な身分だ。

 このタワーマンションでも、お洒落主婦雑誌に出てきそうな都会の若いミセスが、こぎれいな格好をして歩いているのを見掛ける。子どもの手を引いている母親もいれば、それより少し年上の、子育てが一段落してテニススクール通いを楽しんでいる主婦もいる。
 いずれも、田舎ではあまり見掛けなかった人種だ。世の中には実に恵まれた人々がいるものだと、羨望と感心の入り混じった気持ちになる。

 三十路を目前にして一から出直そうとしている自分とは、えらい違いである。でも、そんな自分も愛おしもうと紗恵は思っている。自分は自分のペースで一歩一歩進んでいければいいのではないだろうか。
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