一緒に暮らそう
 その夜。紗恵は新多のマンションに泊まった。

 彼は彼女の後にシャワーを浴び、今、髪を乾かし終わったところだ。
 彼女はいつものように彼の大きなパジャマを着て、彼のベッドに腰を掛けて待っていた。
 彼がボディーソープのいい匂いをさせてやってきた。

 紗恵の隣に腰を掛けると、新多は彼女を抱き寄せて口づけをする。
 そして二人は体を横たえた。

「今日はごめんな。せっかく一週間ぶりに会ったのに」
 新多が謝る。
「別にいいのよ」
「なんかいつもと様子がちがうぞ。アイツに何か言われたのか」
「いいえ」
 紗恵がかぶりを振る。
「ならいいんだけど」

「もしかして、妬いてる?」
 人の気も知らずに、新多が無邪気にたずねてくる。
「そんなことないけど、でも……あの人、あなたと付き合ってったんでしょ?」
「あ、翔子のやつ、そんなことを君に話していたのかぁ。まったく相変わらず何でもしゃべる女だよな」
「やっぱり本当なのね」
「ああ、そうだよ。そりゃ、こんな俺にだって過去に付き合った女くらいはいるよ。学生時代にちょっと付き合ってた。でも、彼女とは就職してから終わったんだ。お互いの勤務地が遠く離れてしまってね」
 昼間、古屋翔子が言っていたことは本当だった。
「そうだったの」
 
 新多が含み笑いをしている。
「どうしたの?」
「なんかうれしいなと思ってさ。君が嫉妬してくれるなんてさ」
「もう」

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