一緒に暮らそう

 入浴の後は座敷で夕食を食べた。
 漆塗りの膳の上には、刺身のお造り、但馬牛のステーキ、茶わん蒸し、百合根と海老のしんじょ、苺とメロンのデザートが載っていた。

 紗恵にとっては久しぶりの上げ膳据え膳だ。 
 最後のコーヒーを飲む頃には、お腹がはち切れそうになった。
 

 紗恵は浴衣姿のまま、布団に寝転がった。
 満腹感から睡魔に襲われた。このまま朝まで眠ってしまっても、新多なら許してくれるだろう。
 
 夜半。ふと目が覚めると、暗闇の中で彼女は布団の中に自分がいることに気付いた。
 寝入ってしまった後に、彼が掛布団を掛けてくれたのだろう。彼のさりげない優しさを感じる。

 その時、新多も目を覚ました。
 本能的に二人は互いの体に手を掛け、相手の体を引き寄せあう。
 二つの口唇が再び重ねられる。
 そこから先にはいつもの愉しみが待っていた。
 
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