携帯電話をめぐる狂気

しかし、女の持っていた希望は、早々に砕かれた。

女が駆け出してすぐ、後ろの足音も後を追うように走り出したのだ。


追われている。


女は必死で走った。
足音がゆっくりと、遠ざかっていく。

足音がようやく聞こえなくなり、女は少し立ち止まって、周囲を見渡した。


いつの間にか、工業地域のような場所に来てしまっていた。

まわりには息を潜めた工場と倉庫だけが並び、人気はまったくない。

帰り道がわからない。

気味の悪いこの場所を抜け出して、人気のある大通りまで戻りたかったが、それもわからない。


女は携帯電話を取り出した。

異性の友人のひとりに、土地勘の非常に働くものがいた。
彼ならば、車で近くまで迎えに来てくれるかもしれない。

番号を呼び出し、掛ける。
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