携帯電話をめぐる狂気
『もしもし?』
相手はすぐに出た。
「ねえ、類くん、助けて」
くどくどと事情を話している間が惜しい。
女は単刀直入に言った。
『どうした?』
そもそも正義感の強いやつだ。女の様子で察したのか、真剣な声になる。
「ストーカーに追いかけられてるみたい。道に迷ってしまったの」
数瞬、沈黙があり。
『わかった。今、どんなところにいる』
女は周囲を見回す。
「工場と倉庫だけ」
『工業地域だな。近くにいるから、すぐに向かう。工場の名前は』
「青池、美川、三田製紙」
目についた看板の名前を読み上げていく。
そのとき、女の耳に、遠くからばたばたと駆けてくる足音が聞こえた。
「来た!」