鬼滅羅〈キメラ〉
「ねえ」

秋も深まり、夜はとても冷えた。
しんと静まり返った薄暗い空間に、私は横たわっていた。

「あたしの親に気づかれるわよ」

ここは私の家のガレージだった。
特に可愛くもない飼い犬が、さっきから警戒しているようだった。

「構わねえよ」

隣りに寝そべる桐山のごつごつした指が、私の頬を撫でた。

汚い手で触らないでよ。

私の白くふくよかな素肌は、もう露わになっていて、男の汗ばんだ腕に包まれていた。

「あたし、犬が欲しい。あたしの言うことなら何でも聞く、下僕のような」

男はまた私の唇を求めてきた。
そしていやらしい笑いを見せた。

「そんなもん、いくらでもくれてやるよ」

男は私の顎を掴み、自分の眼前に引き寄せると、低く地響きのような声で、私に迫った。

「お前は、俺のものだ」

ああ。
この目の前にいる男は、私を欲している。
私のこの美しい身体を欲している!

あんたなんて、私にとっては何の価値も無いけれど。

いいわ。
しばらく、貸してあげる。
つかの間の幸せを、与えてあげる。



だけど覚えておいて。

私は、誰のものにもならない。

私は、私のものだ。
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