あなたを好きになってもいいですか?―初恋物語―
「そろそろいいか? 休憩時間が終わる」

「あ、うん。ごめん」

私は椅子の背にかけてある上着を羽織ってから、鞄を腕にかけて席を立つ

霧島君は、伝票をすっと持って会計しに行ってしまった

あ、お金!

私も払わなくちゃ

私はがさごそと鞄の中をあさって、お財布を出した

「霧島君、いくら?」

パチンと小銭入れを開けながら私は前に立っている霧島君に声をかけた

「いらねえよ」

「え? でも、ハンバーグ定食……」

「俺の奢り」

「悪いってば」

「気にするな」

「気にするよ」

「俺が勝手に昼飯食うのに、付き合ってもらっただけだから」

霧島君が、ジャージの中に財布を仕舞うと店を後にする

「そういうわけには…勝手に練習を見に来たのは私だし」

私は財布を握り締めたまま、霧島君の背中を追いかけた
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