あなたを好きになってもいいですか?―初恋物語―
「今度は嘘をつくなよ」

「え?」

 私を背負っている霧島君が前を向いたまま、話を続けた。

「痛いなら、痛いって言え。隠すなよ。隠されても、俺はちっとも嬉しくない」

「……うん。でもそのせいで、終電を逃したら……て思うと」

「今日みたいな状態だったら、園崎が帰るのにタクシー代を俺が出すくらいできただろ」

「……あ」

「だろ? 嘘をつかれるから、余計、心配になる。だから次からは、嘘をつくなよ。正直に言え。それで俺が『困るかも』とかいろいろとネチネチと考えこむなよ」

「『ネチネチ』って……そこまでは」

「考えたくせに」

 霧島君がクスクスと肩を揺らして笑った。

「わかったか、園崎?」

「ん、わかった。今夜はありがと。それと、迷惑かけてごめんね。終電で帰る予定だったのに」

「園崎が立ち止まって、ウジウジしているよりはマシだ」

 私はそっと霧島君の肩におでこをつけた。

 あたたかくて、ホッとできる広い肩に私は瞼を閉じた。

 もう、嘘は言わないよ。変に気を使ったりしないから。

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