世界が逆転した日
「...俺ね、一人っ子じゃないんですよ。同じ年の...腹違いの兄がいます。」


「腹、違い...?それって...。」


重い話のようで聞くのが怖いけど、明宏のことは何でも知りたいんだ。
明宏が俺に話してくれるというなら。


「よくある話ですよ。兄は正妻、つまり俺の今の義理の母の子です。
俺は父が愛人に生ませた子です。生みの母は、俺を生んですぐ交通事故で亡くなりました。それでこの家に引き取られたんです。

母と兄は、父と一緒に暮らしています。俺はこの家にずっと一人。
母と兄には数回しか会ったことがないんですよ。俺はあの人に...母に嫌われていますからね。まあ、愛人の子なんだから仕方ないですよね。」 


自分のことなのに、まるで世間話をするように淡々と話す明宏。
正直、何て言ったらいいのか分からない。
金持ちの男に愛人がいるなんてよくあることかもしれないけど、俺の周りではそんな話聞いたことなかったから。

だけど...それでもやっぱり、全く愛情がないとはどうしても思えないんだ。
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