世界が逆転した日
「お母さんのことは、俺にはよく分からないけど...。
少なくとも、お父さんは明宏に興味ない、なんてことないんじゃないかな。
確かに良い父親とは言えないよ?小さな子どもを家に一人にして、今だって2、3年に一回しか会ってないし。それは間違ってるけど。
不器用なだけで、上手く伝えられないだけで本当は明宏のこと愛してるんじゃないの?

明宏だって今もこの家にいるのは、お父さんが帰ってくるのを待ってるからじゃないの?」


明宏は立派な職も、金もある。
もう子どもじゃないんだから、出ていこうと思えばいつでも出ていけるはずだ。
そうしないのは、きっと...。


「分かったようなこと言わないでください。あっちゃんに何が分かるんですか?
普通の家庭で、親に愛されて育ったあなたに俺の気持ちなんて分かるはずがない!」


たしかに俺は明宏の言う通り、何も分かってないのかもしれない。
俺の家は、明宏の家みたいに金持ちではないけれど。俺は愛情いっぱいに今まで育ててもらった。
俺はいつだって親に頼ってばかりだった。親孝行なんてちっともできなかったんだ。
...。父さん、母さん...。
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