愛するということ
瞬は、その先に続く言葉ををグッと呑み込んで、ギュッと唇を噛みしめた。


さらにギリギリと噛んで、ジワっと血が滲み始めた。

薄暗い部屋の中に異質な赤色が、浮き出ている。




目が虚ろになっていて、「やめろ」と言う俺の言葉が届いていないみたいだ。




もう、俺にはどうしてやることもできないのか。
こんなに傍にいるのに、瞬の気持ちが遠い。
手を伸ばしても届かない。




こんなにも瞬を――




「・・・!?」





そして俺は――




そこだけ不自然に鮮やかな色をした瞬の唇を塞いだ。

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