12年目の恋物語
部活が終わるまで、叶太くんは、体育館の隅で練習を見ていた。
練習が終わり、先輩たちが先に行くと、真衣は、小走りに彼方くんの元へと向かった。
……行きにくいなぁ。
これから、陽菜のことを話すことになっている。
ちゃんと、待ち合わせ場所、決めておけば良かった。
終わったら電話しようと思っていたから、何も言わずに、部活の後とだけ約束したんだ。
「叶太くん、やっぱり、バスケ部、入ることにしたの?」
真衣の弾んだ声を耳にし、更に気の重さが募る。
「んな訳、ないじゃん」
叶太くんは、カラカラっと笑い飛ばす。
なのに、真衣は食い下がった。
「なんで? まだ、6月だし、ぜんぜん大丈夫だよ!」
「いや、バスケは好きだけど、部活はやらねーって」
と、笑い飛ばした後、叶太くん、わたしに気づいて手を振った。
「おう! 志穂! 待ってたぞ」
あー。
やられた。
コッソリ、別のドアから出て、着替えた後で、電話できたらと思ったけど。
まあ。
ガッツリ、1時間以上、わたしを待ってたんだし、見過ごす訳ないか。
にしても、もう少し、気を使ってよね。
鈍感も、ここまで来たら、罪だわ。
ほら、あの、真衣の顔。
もう。
わたしは、表情は変えないまま、思わず、心の中で独り言をつぶやきまくり、こっそり悪態をついた。