12年目の恋物語


「着替えてくるから、待ってて」

「ああ! 悪いな」



叶太くんの笑顔がキラキラ輝いている。



わたしが何を知っているというわけじゃないのに。

陽菜のこと、何かわかると思って、期待しているんだよね。



真衣の表情が、叶太くんの隣で険しくなる。

誤解だよ。

そう言いたかったけど、もちろん、言えない。



陽菜という彼女がいるのは学校中の知るところだし、わたしが言い訳するようなことでもないのだから。



なのに、



「なんで、志穂が、叶太くんと待ち合わせしてるわけ!?」



更衣室で、真衣が眉間にしわを寄せた険しい表情で聞いてくるものだから、面食らった。



「……は?」



そんなの、わたしの勝手でしょ、とか、思う前に、何を言われたのかと驚いた。



「なんで、叶太くんが、志穂のこと見に来るの!?」



……まさか、

陽菜って人がいながら、

って、言いたいわけじゃないよね?



一瞬、そんなことを思ってみたりもした。

だけど、どう見ても、そんな風には見えない。



そう。



これは、嫉妬。

……でも、嫉妬?



彼女がいる人だよ?



学校1の有名カップルで、

しかも、どちらも、小学生の頃から知ってるのに……。



真衣は、幼稚園も杜蔵だから、もしかしたら、その頃から、知っているはず。



「なにか言いなさいよ!」



妙に強気の態度。



真衣って、こんなキャラだっけ?



叶太くんを好きなのは知っていた。

ってか、感じてた。



でも、そのことを話したことすらないのに。



なんで、こんな強気なの、この子!?



「えっと、……なにかって、

陽菜のことで相談にのって欲しいって、言われただけなんだけど」

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