教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
第十一楽章 星の見える夜、揺れる心を抱いて…
-翌朝-


「おっはようございます!」


言いながら教育実習生の控え室のドアを開ける。


「おはよう」


相変わらず美しい笑みをふりまく森田先生。


「お前、朝から元気だな。昨日はあんな顔してたのに」


「あたしを元気にしてくれたのは、先生、あなたでしょ?」


すると先生はにっこり笑った。


この美しさは天使の微笑みだ。


時が立ち止まる感覚になる。


「ああ、それにしても眠い」


必殺技、天使の微笑み(あたしには効果は抜群だ!)を持つ人がそんなことをいきなり言い出した。


「どうしたんですか?」


まさか何かあって眠れなかったとか?


「いや、夜遅くまでFFⅣやり過ぎた」


なーんだ。


っていうかFFってファイナルファンタジーだよね。


「ドラクエじゃなかったんですか?」


「FFⅣに急遽変更。あのゲーム、シナリオもいいけど音楽なんて最高だぞ」


「はぁ…」


「緊迫感ある2種類のバトル曲。そして怪しさ漂うダンジョンの曲。愛のテーマなんかヤバいね、あれ」


「ええ、ええ」


知らないのでかなり適当に受け流す。


「メインテーマは果てしない冒険を思わせるな。穏やかな村の曲もいいけど、何よりオープニングテーマの壮大さときたら!あれなしでFFⅣは語れぬよ」


かなりマニアックだな、先生って。


この後、あたしは登校完了時刻まで先生に、ファイナルファンタジーⅣについてアツく語られるハメになるのであった。
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