隣に住んでいるのは先生で……。



私はお姉ちゃんの部屋を飛び出した。



あれからの記憶はあまりない………。



何故か、思い出せない………。



まるで、記憶に鍵をしているみたいに思い出せないんだ。



きっと、辛くて思い出したくない記憶だから、思い出せないのかもしれない………。


ただ覚えているのは、しばらくした後にお母さんが私を優しく抱きしめてくれていたことはハッキリと覚えている。



「綾子のせいじゃないからね。大丈夫だからね」



何度も何度も、お母さんは私に言い聞かせるように言った。



あの時はその言葉が魔法の言葉のように思えて、そのお母さんの言葉が私の不安をゆっくりと溶かしてくれた。



でも、今思うと………



お母さんは何を知ってあんなことを言っていたんだろう………。



本当に大丈夫だったんなら、今の私達の関係はこんなにも崩れなかったんじゃないかなって………



たまに思う時があるんだ………。



< 208 / 281 >

この作品をシェア

pagetop