親友ときどき上司~熱風注意報~
さっきの感情の読めなかった荘司の表情は、気のせいだったのだろうか?
瑞希の感情をザワザワと落ち着かなくさせる表情。
曖昧すぎて何と聞けば良いのか分からない表情。
そもそも、聞いてはいけない事のようで、瑞希は自分の疑問に蓋をした。
目の前の荘司はいつもの親友。
なぜか、その親友にチクリと胸が痛んだ。
「ほら、ぼんやりしないで、アタシ帰るから。ちゃんと鍵かけて、チェーンもするのよ。何かあったら電話しなさい。」
「はーい。」
いつもの世話焼き荘司に、母親みたいだと思いながら瑞希も返事を返す。
「分かってる?オートロックなんて簡単に侵入できるんだから、しっかりしなさいよ。」
玄関へ向かう荘司を、ソファーに座ったまま見送る瑞希は、
「荘司、今日はありがとう。」
と靴を履いた背中に言った。