親友ときどき上司~熱風注意報~
「か、帰ってっ!」
大声で叫んだ瑞希の声は、震えて外に届くほどの声量はなかった。
「何だよ。せっかく来たんだから、ヤらせてよ。バレないように協力してやるからさ。」
可笑しそうに笑って瑞希に手を伸ばす隼人に、全身が総毛立つ。
その手に掴まれる前に、瑞希は背を向けてリビングへと走る。
その奥の窓を開ければ助けを呼べる。
きっと、荘司が気付いてくれる。
もつれそうになる足で、窓に駆け寄りロックを外そうとした時、追いかけてきた隼人に、乱暴に肩を掴まれリビングのラグの上に引き倒された。
咄嗟に両腕で頭を庇うように丸まった瑞希は、頭は打たなかったものの背中を強打し息が詰まる。
痛みで遠退きそうになる意識に頭を振って、隼人から離れようと手足を動かした。
パシンッ!
瑞希を跨いで肩を掴んだ隼人に、左頬を叩かれる。