親友ときどき上司~熱風注意報~


 荘司が瑞希の部屋を出て5分程経っていただろうか。

 1時間はマンションのエントランスにいるつもりだった。

 職権乱用まで持ち出して男を威嚇したが、どこか落ち着かない。

 自分の体格や容姿が他人を威圧するものだと知っていたし、徹底的に差を見せ付けて、今後は瑞希に近付かないように仕向けたつもりだった。

 それなのに、あの男への胸騒ぎは消えなかった。


 瑞希の付き合っていた男は、荘司も知っていた。

 委託している運送会社の男で、視察で出た店舗で何度か見かけていた。

 愛想の良い好青年だったと思う。表面上は。



「鴨井さんって、彼女にもクールなんですか?」

 店舗で会った男が、荘司と2人になった僅かな時間に言った。

 
< 52 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop