親友ときどき上司~熱風注意報~


 あれだけ牽制し、荘司の存在を誇示したにも関わらず、どこか腑に落ちない。

 あまりにも簡単に帰った男に、違和感だけが募った。

 その違和感を残した責任は、自分にもある気がしている荘司は、自分の思い過ごしである事を願いながら、瑞希のマンションに留まっていたのだ。


 思わず仕掛けた瑞希へのキス。
 売り言葉に買い言葉で挑発に乗ったのは、頭に血が上っていたからだろう。


 これからは自分が瑞希の側にいるから近寄るな―――
 男に見せ付けるだけのつもりだった。


 思わぬ瑞希の反応と甘い声に、途中から我を忘れて、気付いた時には、瑞希は腕の中でクッタリとしていた。

 こんな姿の瑞希を男に見せてしまった事に焦った。

 呆然と立ち竦む男の姿。
 その姿から、瑞希が男にこんな痴態を晒した事がない、と容易に伺えた。

 荘司に宣戦布告した男だ。

 男なら、屈辱的なはず。

 現にその時、荘司は男に対して優越感を覚えた。


 
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