親友ときどき上司~熱風注意報~


 男の闘争心が荘司に向かえば、喜んで受けて立つ。

 だが、この場合、瑞希に向けられる可能性の方が高い気がした。


 エントランスのソファーに腰掛け、時間を潰そうと携帯を開いたが、落ち着かない。

 瑞希はちゃんと鍵かけた?

 部屋を出た時の、ぼんやりした瑞希を思い出し、荘司は再びエレベーターへ向かったのだった。


 夜中にマンション共有スペースのソファーに大男がいるのは不審な光景だ。

 こうなったら、完全に不審者で構わない―――

 荘司は開き直って、瑞希の部屋の前で不審者になる事に決め、エレベーターの8階ボタンを押した。


 案の定、瑞希の部屋は開いていた。

 戻って来て正解だった。

 あのまま寝てしまったのかと、そっと部屋に上がった時―――








 
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