親友ときどき上司~熱風注意報~


「…じっ!荘司っ!荘司っっっ!」

 それは名前を呼ばれたと言うより、胸を切り裂かれるような鋭い音でしかなかった。

 駆け込んだリビングの光景に、手加減などしてやる余裕を失う。

 他人にあれ程の怒りを覚えた事もない。

 それなりに筋力も腕力もあるであろう男だったが、大男の自分にとっては赤子同然だった。

 体格差も忘れ、怒りに任せて首を掴みそのまま投げ飛ばした。

 ゴミのように床を滑って行く男に向けていたのは、

――明確な殺意―――。


 恐怖に怯える男を逃がしてやるつもりなど、毛頭なかった。
 男も見据えられた荘司から、逃げられるとは思っていなかっただろう。


 瑞希が荘司の名前を呼ぶまでは―――


 
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