親友ときどき上司~熱風注意報~
逃げる男を追おうとした時に、瑞希に呼ばれ足を止めた。
呼ばれなければ、どうなっていただろう。
どうなっていようが荘司は構わなかった。
――おそらく後悔もしない。
それでも、瑞希の声に振り向いた時は、少しだけ冷静になれた。
荘司が後悔しなくても、瑞希は後悔する―――
そう思い至って、まだ追い付ける男を追うのを止めたのだから。
「アタシの方が、良い男だと思うのに…」
ソファーで丸まる瑞希を起こさないように、そっと抱き上げた荘司は、苦笑した後、深い溜め息を吐いた。
瑞希の軽い体を抱えあげて、
「また、痩せた?」
と、返事のない問いを零す。
食が細い上に食べる事に執着しない瑞希は、放っておくと痩せていく。
ここ最近は、荘司の弁当効果でふっくらしていたが、華奢な骨格までは作り替えられない。