親友ときどき上司~熱風注意報~
結局、荘司と一緒に出社してしまった。
フロアに並んで入って来た瑞希達を、好奇の目で見る者はいなかった。
余計な誤解を生むのではないかと心配した瑞希だったが、余りの反応の薄さに拍子抜けした程だった。
新作の発表会前で、デザイナー達は殺気立っているし、各チームリーダーも調整に追われている。
デザイン部門は、服や装飾品、下着に雑貨、それぞれグループ分けされ、更にその中にもキッズにレディース、メンズと細かくチーム構成されている。
瑞希達社員と一線を引く社員は、各チームに数名いるデザイナー達だ。
同じ社員とは言え彼らの作り出す仕事が会社の中枢だ。
今は、季節毎に行われる新作発表会を前に、試作品が作られ、デザイナーに振り回される各チームの統括リーダーが胃薬を愛用する時期。
企業なので譲れない物もあるのは仕方ないが、自由奔放なデザイナー達にも譲れない物がある。
熱気に満ちた空気のフロアに、瑞希の口元が笑みを浮かべた。