親友ときどき上司~熱風注意報~
書類に目を通しながら、妙に視線を感じて顔を上げる。
視線の先には男性社員。
一瞬だけ合った視線はすぐに反らされた。
その後も何度かそんな事が続く。
しかも、その男性社員だけじゃない。女性社員も同じ様にチラチラと瑞希を見るのだ。
顔の痣に思い至ったが、朝の時点で殆ど目立たない状態だった。それも入念にコンシーラーで塗りつぶし、気付かれない自信のあった瑞希は益々首を傾げた。
長い髪を弄びながら、書類と視線を行ったり来たりしていると、ふと専用ブースにいる荘司と目が合う。
瑞希と目があった荘司は、笑いを吹き出した。
防音ガラスの向こうなので、笑い声は聞こえなかったが、慌てて椅子を回転させて背中を向けた荘司の肩が上下に揺れていた。
「…大爆笑、です、か?」