親友ときどき上司~熱風注意報~


 会議室へと並んで歩きながら、瑞希はいまだ落ち着かない気持ちで荘司を盗み見た。

 瑞希より頭ひとつ以上高い位置にある荘司の顔は普段と変わりないように見える。

 でも、なぜか落ち着かない。

 荘司、何か変?
 それとも、私が変なの?

 何がと言われれば分からない変化に、瑞希は首を傾げながら手に持つ書類を抱え直した。


「瑞希、これ、渡しとくわ。」

 エレベーターを待っていると、ふいに荘司の大きな手が目の前にかざされる。

「鍵?」

 節張った指に握られたそれを、荘司は瑞希のスカートの右ポケットへ滑り込ませた。

「アタシのマンションの合い鍵。今日、一緒に帰れそうにないから。」

「えっ?あっ、いいよ。私の荷物、別の日に取りに行くから。必要な物は帰りに買ってホテルに行くけど?」

 さすがに家人のいない家に勝手に入るのは気が引ける。

 元より今夜からは荘司に言われた通りホテルに泊まろうと考えていたのだから。

 自宅に荷物を取りに帰るのは、瑞希自信がまだ勇気がでないので、就業後に買い物に行くつもりだった。


 
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