親友ときどき上司~熱風注意報~
午後のミーティングの少し前になって荘司は戻って来た。
会議室へ大量のサンプルを持って移動するデザイナー達を見ながら、瑞希は部長室へ入る。
「珍しいね。昼休みに外出するなんて。何かトラブル?」
「まぁ、トラブルと言えばトラブルね。完全に私用だけど。」
「?」
うんざりした顔の荘司は、酷く疲れたように溜息を吐いた。
「大丈夫?」
何があったの?とは、聞けない。
完全に私用と言われてしまえば、荘司が話してくれない限りは踏み込んではいけない気がした。
「大した事じゃないから、平気。」
深刻な顔で問い掛けた瑞希を見て、荘司は微笑んで言う。
「瑞希の顔を見たら、落ち着いたわ。」
続けて言った荘司が、瑞希の髪に触れ摘んだ髪を優しく耳に掛けてくれる。
耳裏に荘司の指先が触れてドキリとした。
「…荘司?」
「ん?」
「えっと…会議室行こっか。」
どこか落ち着かない雰囲気に、瑞希は慌てて目線を逸らす。
そうねと言った荘司の指先は、もう1度瑞希の髪を梳いて離れていった。