* promise *
「ヒロ…」

『ん?』

「…なんでもない」



…ダメだ。

顔を見ると言えない。



そうこうしてるうちに、あっという間に家についてしまった私達。



『じゃあな。あ、飲み過ぎんじゃねーぞ』



繋がれた手も離れ、背中を向けて帰っていくヒロに。

一瞬躊躇ったけど、鞄をストンと足下に置くと走って背中に抱きついた。



「いつもありがとう」



今の私にはこれが精一杯だけど。

すごく感謝してるから。

ヒロに少しでもその気持ちが伝わればいい。



『どういたしまして』



私は一つ深呼吸すると、ヒロの身体に回した腕をゆっくり解いた。



『泣くときは、俺んとこ来いよ?』



“じゃあな”ヒラヒラと手を振り遠ざかっていくヒロは、結局一度も振り返らなかった。



「幼なじみ、か…」



遥か昔に抱いた感情。

なんとなく気付いてはいたけど、心の奥底に閉まってきた。

だって、ヒロと私は幼なじみだもん。

それ以上でも、それ以下でもない。



私は、徐に鞄を拾うと家に入った。


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