tearless【連載中】
「ううん。何でもない」

『葵って時々泣きそうな顔するよね?』

「そう?そんな事ないよ」



泣くはずない。

泣けないんだから……―。



『真那斗くんの事?』

「………、」



何て言ったらいいか分からなくて言葉に詰まってしまう私。

“まぁ、泣きたくなったらいつでも胸貸すから”結衣は優しく微笑み私の肩をトンッと叩いた。



「ありがと♪」



結衣に心配をかけない様、精一杯笑顔を作ると、机に出しっぱなしの散らばった化粧品をポーチに押し込み鞄にしまった。



『げ!!次化学じゃん。移動しなきゃ…』

「面倒くさ…」



あと3分もすれば、チャイムが鳴る。

化学室は4階で教室は3階、しかも端と端だから急がないと間に合わない。

化学の先生は生活指導もしている為、捕まると遅れた事だけじゃなく髪型、ネイル、スカート丈と口うるさいのだ。


 
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