tearless【連載中】
『あんな屑の肩持ったって仕方ねーぞ?』



バカにするような笑いと共に肩をポンと叩かれると、急に後ろから殺気を感じた。



『小林…。その手、退かしてくんねーかな?』



低く冷たい、凍り付きそうな声。

もうすぐ8月だというのに、私達の周りだけ重くひんやりとした空気が流れた。



『…担任に向かって呼び捨てか?』



ゆっくり振り向く先生は、璃琥を挑発するかの様に私の肩にしっかりと手を置く。

痛みを伴う程に食い込む手は、私の肩をがっちり掴み離す気配は無い。

私自身も痛みで自然と顔が歪んでくのが分かる。



『親が居なきゃ、お前なんかとっくに退学なのにな?』



先生がそう言葉を放った瞬間“ドゴッ”鈍い音と共に私の肩がスッと軽くなった。

まるで、あの日の様…。

冷たいコンクリートに倒れる先生に、それを見下ろす璃琥。

精気を失った瞳は、ただ真っ直ぐ先生を見据えていた。

怖いぐらいに…。



『お前が担任?笑わせんじゃねーよ』



倒れこむ先生にジリジリと近付くと、跨って胸倉を掴んだ璃琥。

その瞳にはもはや理性の欠片も残ってはいない。



『また、無期停か?』



嘲笑う先生に、更に璃琥は拳を振り下ろした。



“バキッ”

“ボゴッ”



殴る音と先生の咳き込む声が幾度となく繰り返され、ここが学校である事を忘れそうになる。


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