誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「その変装、かなり目立ってますけど?」
…って…うそーっ!
敬は右手を壁に押しつけ、彩が微動だにできないくらいギリギリまで追いつめると、耳元にそっと唇を寄せて囁いた。
「ねっ、彩先輩…?」
……彩、先輩?
終わった――――
脱力した一瞬の隙をつき、敬は背後から両手を回し、彩のメガネを外す。
「あっ」
思わず振り返った瞬間、目と目が合った。
何てきれいな目…
アーモンド形の潤んだ美しい目に吸い込まれそうになる。
「…返して。変装じゃないし…。花、花粉症だし…」
言葉とは裏腹に、抗う気力が失せてゆく。
「俺がその花粉症、治してあげますよ…」
えっ?
一瞬の早業だった。
敬は彩のマスクを剥がし取ると、185センチを超える長身をほんの少しかがめるようにして、彩の唇に自分の唇を重ねた。