夏の日差しと狼のいろ。

カナリアの秘密



 そのまま何となく無言で
 三人は歩いていた。


 アルだけが何故か
 にこにこ笑っている。

 ツキは自分の何処が鈍感なのかなー
 と思いながら

 頭を悩ませていた。



 「あれですよね!」


 急にアルが叫び
 ツキはびくりとする。


 アルのさすほうを見ると
 あの小さな牢屋のゴンドラは
 まだあった。


 今度はきちんとあたりを
 見回し、
 誰もいないことを確認してから
 それに近づいた。






 「………」


 ツキが近づくと
 さっきは反応がなかった少女は
 青い綺麗な、
 でも虚ろな瞳でツキをとらえる。




 「あなた、えっと…
  どうしたの…?」


 「……イクア」


 「え?」


 少女は突然、聞き覚えのある名を
 呟いた。


 その名前を聞いて
 ウルーは機嫌悪そうにし、
 アルは興味津々に少女を見た。


 ツキもびっくりしていると
 少女は付け加えるように言う。




 「………のにおいが、する」


 (に、におい?)


 さっき一緒にイクアと
 居たからかもしれない。


 その前に何故、
 少女がイクアを知っているのか
 気になった。





 「イクアくんと知り合いなの?」


 ツキが尋ねると
 少女は答えた。



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