夏の日差しと狼のいろ。


 「……私…雪狼…だから」


 「ええッ」


 ツキはとても驚き、
 目を見開いた。


 よくみれば
 この少女は雪狼の特徴に
 当てはまっている。



 氷のような髪、
 青い、綺麗な瞳。


 イクアとよく似ていた。

 イクアの髪はもっと
 金髪だったけど。


 後ろに振り向くと
 予想通り
 やっぱり二人ともおどろいていた。


 そして少女は再び
 口を開く。




 「……アナタは、ひめ?」


 ひ、め?


 ひめって何だろう。
 ツキが首を傾げると
 少女は小さな声で、
 雪狼にしかわからない、

 異国の言葉で言った。




 『…昔さらわれた、姫』

 何故か、ツキには
 その異国の言葉がわかった。


 わかってしまった。


 それは私がほんとに
 雪狼だからかもしれない。



 『わからないけど
  イクアくんにも言われたよ…』


 ツキもその言葉で返すと

 少女はやっぱり、と
 初めて微笑した。


 その笑顔は
 眩しいくらいに可愛らしい。



 『この言葉を話せるのなら
  やっぱりアナタは姫なのね…!』


 嬉しそうに笑う少女に
 ツキも笑ってしまう。


 『ありがとう』

 ツキはそう言うと、
 次に尋ねたいことを尋ねた。



 『アナタ、名前は?』

 『あだ名はカナリア…
  本名はリル』



 二人が楽しげにしていると
 後ろから
 アルがイライラしたように言った。



 「何語ですか?
  わかるように話してください」

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